SSH(卒業生の活躍)

【SSH卒業生の活躍】No.3 K.Iさん(37期生)

☆SSH指定期間に活動した卒業生の活躍を、定期的に更新していきます☆

K.Iさん(37期生)

卒業年:2017 年卒業

経 歴:2021 年 3 月 東北大学理学部数学科卒業

経 歴:2023 年 3 月 東北大学大学院理学研究科数学専攻 博士課程前期 2 年の課程 修了

経 歴:2026 年 3 月 東北大学大学院理学研究科数学専攻 博士課程後期 3 年の課程 修了

研究について

大学では、 p-進解析および p-進関数解析をテーマに研究していました。複素数の絶対値はアルキメデス的と呼ばれる性質を持ちますが、私が研究対象としていたのは、非アルキメデス的な世界(しばしば p-進と呼ばれる)における解析です。このような世界では、複素数の世界で成立していたことがそのまま成り立つとは限りません。また、複素数の世界では成立しないことが、逆に成り立つ場合もあります。もう少し詳しく述べると、実数や複素数の重要な性質として「局所コンパクト性」と「連結性」が挙げられますが、非アルキメデス的な体は一般に局所コンパクトではなく、かつ常に完全非連結です。この違いが独特の現象を生み出し、非アルキメデス的な世界を非常に興味深い分野にしています。私は主に、コンパクト性、スペクトル定理、有限次元ノルム空間の分類、解析的関数に関する研究で成果を上げました。

SSHと私

(1) SSHの経験

高校時代は、日常に潜む数理の研究ゼミに所属していました。研究内容は数列の周期性で、特にフィボナッチ数列のような二項間漸化式で定まる数列に強い興味を持ちました。ゼミ活動では、指導教員や同じゼミの生徒に加えて、他校の先生方や大学の先生方とも数学の議論を交わす機会がありました。その結果、第五回茨城県高校生科学研究発表会において優秀ポスター賞をいただきました。このように、自分の学校にとどまらず交流が広がっていく点が、SSH の大きな魅力であると感じています。

(2) 大学での活動

高校時代の SSH の交流会で、二項間漸化式を調べる際には代数的整数論が役に立つという助言をいただいたことがありました。この経験がきっかけとなり、大学数学への移行を比較的スムーズに行うことができました。大学では自主性が非常に重要であり、SSH を通じて自分のやりたいことが明確になっていたことは、大きなアドバンテージであったと感じています。また、大学進学後もアドバイザーとして SSH の活動に関わる機会をいただきました。その際には、高校生に興味を持ってもらえる話題を必ず提供することを意識していました。

少し SSH から離れて、私の研究生活について述べます。学部 1 〜 3 年生の間は、自主勉強や自主ゼミを中心に学習を進めていました。4 年生になると指導教員のもとでのゼミが始まりますが、この時期は学ぶことで精一杯で、研究に本格的に取り組める状況ではありませんでした。本格的に研究が始まったのは、修士 1 年の後半頃からです(数学科では修士課程修了に査読付き論文が必須でないことも多い)。研究の過程では、自分の成果が既に他者によって発表されていたといった経験もあり、多くの困難に直面しました。しかし、SSH で培った忍耐力に支えられ、最終的にはいくつかの論文として成果をまとめることができました。さらに、大学において博士論文賞をいただくこともできました。

後輩へ

ここでは、大学での経験を通して得た探究・研究に対する考えを述べたいと思います。少しでも後輩の皆さんの参考になれば幸いです。

探究活動は、大きく分けて「疑問や興味を持つこと」と「それを深く追究すること」の二つの段階から成ります。興味の対象は人それぞれであり、そのきっかけも授業や課外活動など多岐にわたります。私の場合は、数学の授業を通して数学に興味を持ち始めました。

次に、その興味をどのように研究へと発展させるかについて述べます。ここが特に重要であると感じています。私が常に意識していたのは、「問題意識を持ち続けること」です。私の体験を例にもう少し詳しく説明します。まず、何か解きたい問題があるとします。それに対してすぐに取るアクションは二つです。一つはその問題に対して徹底的に考えることで、もう一つはその問題に関する参考文献をあたるということです。これで解けたらいいのですが、難しい問題はなかなか解けません。時間は有限ですので、一回詰まると、私はいったん別の数学を勉強し始めます。ここで大事なのが、問題意識を頭に持ち続けることです。意識すると、別の数学の情報を入れながらも研究対象が頭の傍らにあります。そして、その別の数学の情報のなかに自分の研究対象に活かせる考え方はないかなどと、自然に考えるようになります。ただし、この状態を維持するのは容易ではありません。人は考えることよりも情報を受け取ることの方が楽だからです。それでも意識し続けることで、ある瞬間に解決の糸口が見えることがあります。実際に、そのようにして得られた結果のいくつかが論文としてまとまりました。大学院での経験から、研究における差は「問題を意識し続け、考え続けているかどうか」に表れると感じています。

最後に、私の研究に対する姿勢の原点は、高校時代の SSH にあります。だからこそ、皆さんにもこの恵まれた環境を活かし、ぜひ探究活動に積極的に取り組んでほしいと思います。